本なので一応こちらのカテゴリに。
文庫ではなくて普通のハードカバー本でした。
科学畑の人は人間関係に不器用そうだという思い込みがあっただけに、
全章通した『物を作ることは人の心を育てることだ』という熱い持論展開にまず驚かされた。
特に教育現場に憂いを持たれている方でもあるようで、
そこの考え方自体には納得もいく立場(教育者)の方ではあるのだけど、
物を見る視点から感じる柔らかさ、ナチュラル感にちょっとびっくりした、と言うべきか。
勝手にイメージしていた斜めっぽさがさっぱりなくて、
それこそ精神科医の人が書いている本にも感じる読み触りだった。
科学者というよりも技術者、むしろ職人さん的な印象かな。
専門の工学だけではなく、心理学や禅、仏教の精神も引っ張ってきている内容で、
科学者さんに対する固定観念もするっと吹き飛ばされたし。
ロボット製作って言うのは、ようするに人の構造を機械に真似させる発想なのだし、
ロボットに興味がある人が人間には興味を持たない、っていうイメージは
よくよく考えればちょっと軸が外れた想像だったのだよなあ。
とは言っても、本の内容自体は人間と機械を比較したり、
人の構造を説くために機械作りを説明していく、というようなものではなくて、
自分の手で何かを作ることでどれだけの発見があり、人の心が成長するかを説こうとしてる。
ロボット作りのワクワク感、ゼロから設計して壁にぶつかったり工夫を繰り返すことの大事さ、
そういうものを子どもの時代から持つことがどれだけ大切か、
それをしっかりと確信を持って本に仕立て上げられているような感じでした。
あとは、物は出来上がっていて当たり前、の現代風潮をやや批判した内容でもあったかな。
自分の手と頭でまずは考えなさい、考えさせなさい、って感じの教え方。
個人的には、その狙いより、色々な思い込みを取り払うという意味で勉強になった。
日常的にあまり触れることのない職業に就いている人の中にある、
自分の職業への思い入れや、人を見る思想のありかたを分かりやすく知れたこと。
心理学について少し解説してあった章とが一番楽しかったかな。
人の心理については1300年以上前の段階で既にある程度が解体されている、とか、
その辺りが一番読みにくくて興味深かった内容だったので、
そちらについてはいつかもうちょっと別の本を読んでみたい。
あと、子供のロボット作りについての実践レポートが取り上げてあった項も、
懐かしくて参考にもなった! 子供のパワー凄いなー、侮れないなー。
ここで挙げられていた通りの思想を日常に実践することはなかなか難しいけど、
また時間を置いてもう一度読み返してみたい本ではあるなあ。
怒りはどうやって形にしたり表現すればいいのか、
その置き所に対する悩みをどうにも長いこと抱えていたのだけど、
怒りや不快感を一種類の感情ではなく、色々な種類に分類する考え方がある、
ということを知れたのも、とても開眼するような思いだった。(煩悩と髄煩悩のくだり)
怒らない、ということと、怒りをコントロールすることは似て異なるものなんだなあ。
感情は抑えるのではなくて、こし器でこすのが、誰の胸にも優しいやり方なのかも。
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