文庫版が出ていたのでようやく購入。
思いっ切り書き込めそうな人間社会を、
芯の通った優しさとときめきで酢締めしてあるのが有川テイスト。
あれから色々読んだのでちょっと付け足し。
夏木さん大好き。クジラの彼の夏木さんも大好きすぎてやばい。
さておいて。
夏木さんたちの魅力あるキャラ立ちは勿論のことなんだけど、
まず目が行ったのは、親の手の上でコミュニティを作ってしまう中高校生たちの微妙な心理。
親の考えに知らず影響されちゃう子どもの悲しさといったらないのだけど、
現実問題そんなものだよなあとも感じるリアルさがあった。
ちょっと心理学の本を読んでみた後に改めて思ったのだけど、
もしかしたら有川さんは心理学関係の知識もある程度お持ちの人なんじゃないだろうか。
児童心理というか、親子関係についてかな?
図書館戦争別館の一巻で、母親の呪縛に郁が縛られている、と麻子に指摘されたシーンなんかは、
丁度最近読んだ内容にドンピシャだったし。
海の底に出ている子供たちについては、
まだ子供のままなのでそんなに明確なトラウマは出ていないのだけど、
親の些細な言葉に傷付いたり、不安を確認出来ずに誤解したまま身を縮めたりしてしまう、
キャパシティの小さな子供の目線は至極それらしいなと思う。
少し関係ない話に飛ぶのだけれど、別冊一巻の小牧さんの実家の話も凄いリアルだったんだよな!
誰かしらの実体験なんじゃないかと思ってしまう位の生っぽさがあった。
あの下りは鞠江ちゃんの返事を含めてかなり好きなシーン。
有川さんの物語は、正しいことを選べる人が選べない人の弱さをきちんと否定するお話だよね。
話を戻して。
ああした、ごく手近なところにある人間関係の難しさが書き出されている一方で、
今の日本が抱える複雑な防衛事情、辛勝前提で戦う現場の大人の悲壮な立ち回りも書かれてて、
あちらは不謹慎ながらにも凄くドキドキしながら見守ってしまった。
ああいう風に犠牲になることで道を作るしかない人も居るんだろうな、実際に。
問題が差し迫らないと危機感を抱けない国民性は問題なのかもしれない。
これは自分も含めてでもあるのだけど。
普段は意識しない専門職の人達の全力での攻防戦まで手抜きなく書かれていて、
物事を考える題材にまるで困らないそんなお話。
私の場合はひとまず、有川作品ではこの本が一番好きでした。
ちっちゃい子たちの屈託の無さは癒しだったし、
夏木さんの真摯さと不器用さが物凄い好きだった。
その内クジラの彼もきちんと買いたいな、と思う。
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